「斜面に木が真っ直ぐ立つのはなぜ??」

※第2回 Zoom木の勉強会 資料

素朴な疑問ですが、山の斜面に木が真っ直ぐに立っていますよね。あれはどのような構造になっているのでしょうか。疑問に思われた事はないですか?京都の北山にはこのように美しい杉林が見れますが、どれも真っ直ぐ木が伸びているのが分かると思います。

しかし斜面に生える樹は、下左の写真のように最初は斜面に垂直に生え始める場合が多く、途中から根元で方向を変えて上に伸びようします。まずこの理由についてですが、『植物は極力エネルギーの消費をする事なく、自らの生育に有利な形を保とうとする性質を持っています。』もし斜面から斜めに生えたとするならば、常に重力に打ち勝とうとする力が必要となり、そこに多くのエネルギーを使わなくてはなりません。また木は南側の方が北側に比べ、多くの葉っぱを茂らせます。それもより多くの光を受ける為の工夫であり、生育に有利な形を保とうとする樹の性質なのです。

さてここまでが樹が真っ直ぐ生える理由の説明でしたが、ここから斜面対向して地球に垂直に伸びる仕組み(構造)についての解説をさせて頂きます。

植物が重力に対し反対方向に茎を曲げる性質を、重力屈性と呼び、光の方向に茎を曲げるのが、光屈性と呼ばれています。今回は重力屈性の仕組みについての説明です。左の写真の矢印のように斜面に生える樹は、重力に対向して真っ直ぐ踏ん張ろうとする力が必要となります。自重を支え風や重力に負けない為には、樹の通常の組織では対抗できません。その為に自ら組織を変化させ、より強靭な組織を作り上げたのを木材用語で「アテ」と呼んでいます。このアテも針葉樹と広葉樹とでは異なり、針葉樹は斜面の下側にアテをつくり、広葉樹は斜面の上側にアテを作ります。そしてこのアテには通常の何倍ものリグニンやセルロースを貯め込み、大きな応力を生んでいます。またこのアテの部分は組織が硬く、製材の時にも大きな反発を生む箇所でもあります。我々製材や木材の加工をする業者にとって、アテを克服する事が大きな課題でもあるのです。

アテは木材利用には厄介な箇所でもありますが、使い方次第では大変役に立つ場合があります。それがこの梁丸太です。

梁丸太の上側(背の方)にはアテがあります。梁として使う場合、屋根の重量を束を介して受けますが、その場合重量で屋根が下がると問題が生じます。

梁丸太は湾曲形状の力学的な長所と併せて、アテの持つ強靭な応力が重い屋根を支えているのと考えます。

昔から無垢の木を使うには、アテを見極め上手く使う事が求められてきました。しかし現在ではプレカットに頼る事が多く、木を見る目利きの出来る方も少なくなっています。本来であれば「自然の木をありのまま活かした構造」が、全てにおいて理にかなっているようにも思えるのですが。

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