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「木は生きているのか?」
よく自然素材を扱う工務店さんが「木は生きていますから」と発言されていますが、本当に生きているのか?って疑った事ありますか???
実は私も木は生きていると思っている一人なのですが・・・。少しへそ曲がりな発言になりますが、生物学的に言えば製品として乾燥した木は死んでいるのです。よく「木は呼吸するので生きているのだ」と言われますが、その理由についてはまた次回という事で。
 では山に生えている樹木は果たして生きているのか???またまた不可解な問いをしましたが、答えはノーなのです。驚かれるかもしれませんが、樹木の「樹幹」と呼ばれる部分はかなりの割合で死んでいるのです。

1本の木(樹木)があったとします。このうち生きている部分はどこかと言えば、葉は光合成に欠かせない部分なので生きています。根も土壌内から水と栄養分を吸い上げる為に必要な部分なので、やっぱり生きていると言えます。
 では樹幹はどうかと言えば、結論ほぼ死んでいると言われています。これはあくまでも生物学的な見解なのですが。形成層が外側に分裂して創り出す樹皮のうち、内樹皮は生きていますが外樹皮は死んでいます。
これは核やミトコンドリアと言った細胞の内容物が消失しているのが理由です。
樹幹の形成層は細胞分裂を行い木を成長させる部分なので生きていますが、辺材(白太)は分裂後しばらくは生きているのですが、リグニンの沈積に伴って抜け殻(細胞壁)だけを残して死んでしまいます。
残るは心材(赤身)ですが、辺材が死んでいく事から察すれば死んでいる部分と解釈されています。何度もいいますが、これはあくまでも生物学からの見解で、私たち木材や建築に携わる者にとっては、「木は生きている」と言いたいですし、言えると思っています。
 最後になぜ樹木は自らの細胞を死滅させているのかと言えば、「樹木にとって生かしておく必要がないから」です。大木の重量を支え風などの外力に対向するには強い細胞壁があれば良いわけで、細胞が死んでいても問題はないと判断してるからです。
もう一つ、細胞を生かしておくためには多大な養分が必要であり、成長に必要な部分は生かし、生きている必要のない部分は死滅させるというシステムによるものです。
大径木の中心部分に大きな洞が出来たのを見かけますが、なぜ樹木が枯れないのかは、もともと死滅している部分が腐朽して穴があいただけなので、樹木にとっては大きな問題ではないからです。
如何でしたか?木は生きているのか死んでいるのか?こんな事を科学的に判断するのはナンセンスとも思われるかもしれませんが、色々な側面から判断するのも必要かと考えます。
【参考文献:日刊木材新聞社】
